ある少年の成績レポート

QLOOKアクセス解析



田谷です。

興味深い文章を見つけたので紹介したいと思います。

イギリスのある少年の生物学の成績についてのレポートです。

“It has been a disastrous half. His work has been far from satisfactory. His prepared stuff has been badly learnt, and several of his test pieces have been torn over; one of such pieces of prepared work scored 2 marks of a possible 50. His other work has been equally bad, and several times he has been in trouble, because he will not listen, but will insist on doing his work in his own way. I believe he has ideas about becoming a Scientist; on his present showing this is quite ridiculous, if he can’t learn simple Biological facts he would have no chance of doing the work of a Specialist, and it would be sheer waste of time, both on his part, and of those who have to teach him.”

以下は上のレポートの翻訳です。

”今学期は本当に惨惨たるものでした。彼の仕事ぶりは満足からほど遠いものでした。彼が準備してきは試料はでたらめで、いくつかの供試片は破けていました。そうした試片のひとつは50点満点中たったの2点をつけられました。彼のほかの仕事も同様にひどくて、そのうえ彼は何度もトラブルをおこしました。その理由というのも、人の話を聞かず、そのくせに自分のやりたいように仕事を押しすすめようとするからです。彼は科学者になりたいようですが、今の彼を見る限りこれは全く馬鹿げた考えです。単純な生理学的事実も学ぶことができないなら、専門家になれる見込みはないでしょうし、彼にとっても彼を教える側にとっても全く時間の無駄というほかないでしょう。”


…ひどい言われようですね。私はここまでひどい点数をつけたこともつけられたこともありませんが、ともかくこんな評価をもらったらかなり長いこと落ち込みそうです。

しかし、このひどい成績をつけれられた少年は、後になんと夢かなって生理学者になります。

それだけではありません。

少年はこの酷評を受けてから60数年の後、ノーベル賞を受賞することになります。



もうお気づきでしょうか。この少年というのは、つい先日ノーベル生理学・医学賞を京都大学の山中伸弥先生とともに受賞した、ケンブリッジ大学のジョン・ガードン先生(写真)です。

ガードン先生、よっぽど悔しかったのでしょう。このレポートを大事に大事にとっていました。今では先生が所長をつとめる研究所のホームページで公開されています。

Gurdon Institute http://www.gurdon.cam.ac.uk/jbg-report.html

私はこの記事から「天才は幼いころは問題児」というステレオタイプな物語を引き出すつもりはありません(実際、このレポートはイートン校という日本で言えば筑駒のような高校での評価です。ガードン先生この時点ですでにエリートでした)。ただ、60年以上前のレポートを今でも持ち続けている、というところに強い意志というか信念のようなものを感じます。私の主観ですが、研究の世界では成功する人はとても負けず嫌いで悔しがりな人が多いように思います。

ところで、日本の報道は山中先生一色であまり注目されてなかったガードン先生ですが、iPS細胞の発見はガードン先生の功績無しには語れません。今回の発見にかぎらず、科学の進歩は常に先人達の地道な努力の積み重ねなのですが、そのことが軽視された報道になってしまったのは残念です。

さらに、iPS細胞の発見までの道程にはもう一人偉大な人物がいました。このことについては大変良い記事がありましたので最後に紹介したいと思います。

第3の男を忘れるな ノーベル医学賞 http://lowell.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-e8e6.html

今回のノーベル生理学・医学賞を受賞した研究がどのようなものだったのかもわかりやすく書かれていますよ。是非読んでみてください。

田谷