護送船団方式

日本の高度経済成長期の金融行政を表現した言葉。私が大学院に入りたての修士の頃、先輩や先生がこの言葉を自嘲気味に使いながら、発表経験の歴の浅い院生の学会発表の練習を遅くまで付き合ってくれた。学会前日に、誰かのホテルの部屋に集まり、発表練習を行ったり、会場の空き教室を借用して、口頭発表の練習を行う。当時、他の大学の人から見れば、私たちの集団は異常に見えたらしい。前日に発表練習をしていると、先輩や先生たちの議論が始まり、急きょスライドを変更するなんてざらだった。狭いホテルの部屋なんだけど、その景色をいまだに覚えている。速度の一番遅かったであろう私という船は、先輩や先生に護送されることによって、徐々に成長できたと思う。

ただ、この方式は功罪があることも、時代に合わないことも理解しているつもりだ。でも、私は時代に反しても、この護送船団方式を受け継いでいきたいと思っている。それが向き合うことと直結していると思うから。

昨日、表現学部のエンタービジネスコース主催の学内ゼミ対抗プレゼンコンペに、中澤君と内田さんが出場した。私たちの研究領域やその意義を一般の人に伝えることは本当に至難。実際に3年次に取り組んできた内容を詳細に説明するよりも、どのようにゼミで切磋琢磨しているのかを伝えることに専念して発表に臨んだ。数週間、2人とも就活と並行しながら、内藤さんのPPTを参考にし、テンプレートを受け継ぎ、そこに草野さんの卒論PPT、神永君の卒論PPTをお手本にしながら、発表資料を作っていた。就活との並行だったけど、夕方からでも私の研究室に顔を出し、いつもぎりぎり10時まで。なかなか思うように進まず、苦労を重ねる2人だったけど、本当に頑張ったと思う。

ここは違う、表現変えよう、フレーム作らなきゃ…この二週間何度もこれらの言葉を投げかけた。学生二人で発表するのて特に議論や相談を重ねたし、毎回私にダメだしされても素直に受け止め、パソコンに向かう二人の姿があった。

発表当日。発表内容は努力の成果が表れたと思う。そして、直後の質疑応答。エンタービジネスコースの川喜田・国枝ゼミの学生が、理解力に富む質問を連発し、教育人間学科の山本ゼミの学生が堂々と質問を重ねる。テンパった回答。これも経験。誰もが通る道。発表のいい部分、質疑応答の悔しい部分。充実感と悔しさが交わる2人。

打ち上げとして、兄のお店に行き、肉とワインとお好み焼きでこの交差を癒す。次につながる発表だった。私も含め、頑張ってやろう!と強い気持ちへと切り替えることができた。

私自身、本当に頼りない護送船であることを恥じてしまうし、申し訳ない気もする時もあるけど、それぞれの船が経験を積むことで伸びていく。2人に素敵な時間をもらえた気がする。私はやはりこれを続けていくことが大切なんだと教えてもらえた気がする。中澤君、内田さん、ありがとう。

このような機会をいただいた、表現学部の山田先生に感謝の意を最後に述べさせていただきます。小嶋副学長より審査員特別賞をいただきました。ありがとうございました。