田谷です。
10月も後半に突入し、夜が長くなってきました。早めに帰宅した夜はDVDでもレンタルして映画を観るのに良い季節になりましたね。
というわけで、今回は心理学に関連する映画を紹介したいと思います。
メメント(2000年/アメリカ)
『ダーク・ナイト』『インセプション』『ダークナイト・ライジング』で立て続けにヒット作を出し、今やすっかり大物監督となった感のあるクリストファー・ノーランの出世作です。
(あらすじ) ある日、主人公・レナードの妻が、自宅に押し入った何者かに強姦され、殺害されてしまう。レナードは現場にいた犯人の一人を銃で撃ち殺すが、犯人の仲間に突き飛ばされそのときの外傷で、10分間しか記憶が保てない前向性健忘になってしまう。
復讐の為、犯人探しを始めたレナードは、自身のハンデをメモをする事によって克服し、目的を果たそうとする。出会った人物や訪れた場所はポラロイドカメラで撮影、写真にはメモを書き添え、重要な事は自分の体に刺青を彫り込んだ。しかし、それでもなお、目まぐるしく変化する周囲の環境には対応し切れず、困惑し、疑心暗鬼にかられていく。
果たして本当に信用出来る人物は誰なのか。真実とは一体何なのか。
(Wikipedia より)
上のあらすじにも書いてある通り、この映画は前向性健忘がキーワードになっています。これは「新しいことを覚えることができない」という健忘症の一種で、実在する症例です。一方で「昔のことが思い出せない」といういわゆる「記憶喪失」型の健忘症は逆向性健忘と呼ばれます。テーマ研究Aで私のクラスを受講している人は知ってますよね(忘れた?)。
あまり知られていないけれども「知覚」は心理学の重要な研究分野のひとつだという話を以前しましたが、「記憶」もまた心理学で盛んに研究されているテーマです。
さて、映画ではこの前向性健忘の症例が時系列の逆転によってとても巧みに表現されています。つまり、この映画はなんとラストシーンから始まって、少しずつ事件発生当時まで時間を遡って見せて行くのです。この手法をとることで、観客は主人公と同じく今からおよそ10分前までの記憶が無い状態を体験することになります。そうして少しずつ少しずつ真相が明らかとなり、最後には衝撃の結末が。。。見終わった後、もう一度最初から見返したくなること必至ですよ!
メメントは監督の弟であるジョナサン・ノーランが原案なのですが、彼は大学の心理学の授業で前向性健忘の話を聞いてこの映画のアイデアを得たそうです。私も学生時代(メメント公開より数年ほど前の話です)、講義で初めて前向性健忘の話を聞いた時は「なんて奇妙で興味深い症例があるんだ!」と大変感銘を受けて周りの友達に話しまくったものですが、映画にならなかったのは残念です。
なお前向性健忘をあつかった映画と言えば、小川洋子さん原作の邦画『博士の愛した数式』(2006年)も有名ですね。
田谷
