眠れぬ,夏の夜

このままでいいのなら,私はきっと楽だ.勤務先の大学に行くことを制限され,在宅を命じられる.自宅から徒歩10分で公共交通機関も利用しない,個人研究室なので,リスクも少ない.でも自宅で時間を過ごす.


このままでいいのなら,私は主夫だ.妻は看護師で病院でストレスな状況に立ち向かいながら頑張っている姿を見ているので,支えたいと思う.在宅勤務の私はできる限り家のことや息子の養育をしたいと思う.


割り切りさえすれば,楽なほうへ向ったら,どれだけ楽なんだろうと思う.正直に言うと,私は要領の良さと,馬鹿なほどお人好しで生きてきた.お人好しな部分を捨て,要領のみで生きていくことができるのなら,私は安泰なところにいるんだろう.


それを拒む自分と向き合って,でもこれまでと違う時間が流れ,必死に取り組もうと思うことの下駄を大学に外され,戸惑う日々だった.
OBに声をかけて,温かい言葉をもらって,やっぱり思い出した.
私らしく.思いっきりぶつからないと得られないもの.
ぶつかることで見せることができるもの.

私は,ごく少ない,でも覚悟を持って私を選んでくれた学生に伝えることをやめてしまったら,何が残るだろう.
要領よくして中途半端に得られるものよりも,傷つきながらも,本心を伝えることで,得られるかけがえのないもの.


忘れていたなぁと思う.学生からの評価や,他の教員からの評価の気にして,私はダメになっていたと思う.
やってやる.もう立場的には言える言葉じゃない.でも,やってやる.そういう,強い気持ちが,いま必要なんだ.