長田 弘という詩人の書いた本に「ねこに未来はない」というエッセイがあります。
これは、「猫はお先真っ暗」という意味ではもちろんなく、 猫は未来という概念を持たないので先のことを心配しなくて良いという意味です。
本当に猫が未来の概念を持たない生き物なのか、私は不勉強で知らないのですが、目の錯覚(錯視)の起り方については、猫と我々の間にあまり大きな差はなさそうです。このことを示すなかなかカワイイ映像が YouTube にアップされていたので紹介したいと思います。
私の講義では何度か紹介したと思うのですが、この動画の猫が見ているのは「蛇の回転錯視」、世界的な錯視研究者である立命館大学の北岡明佳先生の代表的作品です(もっと大きな「蛇の回転」の図はリンク先のページで見ることができます)。
この錯視は止まっているはずの絵(蛇)が回転して見えるというものです。なぜ動いて見えるのか、ものすごく簡単に説明しますと、絵の持つ色の配置と目のごくわずかな振動の組み合わせが、「ものの動き」に反応する脳の部位を刺激するためです(もっと詳しく知りたい人は、このリンク先の解説を読むと良いでしょう)。
猫にもこの錯視が生じることは、猫と我々人間のもつ視覚のメカニズムに共通する部分があることを示唆しています。ただし、このことは「猫は我々と同じような視覚体験を有している」ということを必ずしも意味するわけではありません。それはどういうことか、ここでは説明しませんが、ちょっと考えてみてください。「コウモリであることはどのようなことか」というキーワードでググってみると、より深く考えるきっかけになるかもしれません。
田谷