田谷です。
突然ですが、まず、下のリンク先の動画を見てください。
紙でできたドラゴンが、まるでカメラを追いかけて首を振っているように見えたのではないかと思います。この錯視(目の錯覚)はとても有名なので、既に見たことがあるという人も多いかもしれません。
この錯視は、竜の模型を使っていることから「ドラゴン錯視(dragon illusion)」と呼ばれていますが、特に形が竜である必要はありません(実際、トラの形をしたものもNTTの運営する錯視のページで見ることができます)。なので、以降この錯視を「首ふり錯視」と呼びたいと思います。
首ふり錯視は大きくは「逆遠近法錯視(riverse perspective)」や「ホロウマスク錯視(hollow mask illusion)」と呼ばれる錯視の仲間になります。これらの錯視はすべて「見た目の奥行きと実際の奥行きが逆転している」という共通の構造を持っています。
私の担当する基礎ゼミⅢでは、この錯視のメカニズムについて勉強し、自分たちでオリジナルの首ふり錯視を作るという課題を行いました。今日は学生が作った作品のいくつかを紹介したいと思います。
これは上に見せたドラゴン錯視や虎の錯視と形としてはほぼ同じものになりますが、なかなか可愛らしいデザインですね。錯視効果も強いです。
こちらは自動車のデザインです。仕組みは同じですが、形はドラゴン錯視から大分離れています。オリジナリティのある良い作品だと思います。
「心理学」というと、カウンセリングや心のケア、あるいは犯罪者のプロファイリングといったことについて研究する学問、というイメージを持っている人が多いかもしれません(もちろん、それらも心理学の重要な研究分野です)。しかし、人間の知覚(見たり、聞いたりすること)のメカニズムについての研究もまた、実は心理学ではとても盛んに行われています。
「見ることについて研究するのって心理学なの?」と意外に思う人も多いのではないでしょうか。実際、カメラで写真を撮るように、目に光さえ入ればものが見える、と素朴に考えている人もとても多いです。しかし、視知覚は実は目だけがあっても成立しない、心の重要な機能のひとつなのです。
錯視(目の錯覚)もまた古くから心理学の重要な研究テーマなのですが、これは、目の錯覚が生じる原因を考えることで、物を見るメカニズムについて明らかにしていくことができるためです。次回は首ふり錯視のメカニズムについてお話したいと思います。
田谷