田谷です。
首振り錯視の解説記事、最終回です。
前回、首振り錯視で奥行きの逆転が生じるのは、①片目を閉じたりカメラを通すことで奥行きの判断が難しくなり、②その上で、「出っ張っていること」をシグナルする絵が実際には凹んでいる部位(顔)に描かれているから、という話をしました。
今回はなぜ上のように作られたペーパークラフトを片目で(or カメラ越しに)見るときに「追いかけてくるような」動きがみえるのか、という点について解説します(今回は長い上に結構難しい話です。がんばって理解してください)。
この奇妙な動きのタネ明かしを理解するには、まず普段私たちの顔が動くときに、外の世界がどのように動いて見えるのか、という点を理解する必要があります。まずはここからお話ししましょう。
我々が移動したり頭を動かしたりするとき、遠くのものは頭と同じ向きに、近くのものは頭と逆向きに動いて見える、という法則があります。試しに左右の手の親指を立てて、右腕はまっすぐに、左手はその伸ばした右腕の肘のあたりに添えて、親指同士が重なるように片目で見てください(図1)。その状態で左右に頭を振ると、遠くの右の親指を見るときは左の親指が頭とは逆向きに、右の親指は頭と同じ向きに動いているのがわかると思います。
この法則をよく覚えておいてください。
さて次に、首振り錯視のペーパークラフトを片目で(あるいはカメラを通して)見るときのことを考えてみましょう。このとき、ペーパークラフトの顔部分の前後関係は逆転しています。